“働く”ということを勘違いしてないか?批判するなら対案を出せ

2004年11月26日

もっと練り込め!

毎回楽しみにしているブログに大西さんの『大西宏のマーケティング・エッセンス』があります。
11月25日付の記事“「ひとこと」と「331の構成」のススメ”の中で、大西さんは、プレゼンテーションの最後のひとことをひねり出すのは、かなりの時間(労力)と思考力を要すると書かれています。
経験されたからこそ実感されている含蓄のあるお言葉です。

私もこの点について共感します。
ひとこと」というのは、それこそたった「ひとこと」であるがゆえに、一見簡単そうに見えます。
ひとことをひねり出す苦労をしたことのない人なら、「なんだ、こんなことを思い付くのにそんなに時間がかかったのか」などと切り捨ててしまうかもしれません。
しかし、練り込まれた言葉というのは、魂を持つがごとく、それが理解できる人にはインパクトがあるものなのです。


大西さんのブログが好きなのは、文章が練り込まれているという点です。
読み手にとっては、どこに論点があり、大西さんが何を言わんとしているかがわかります。
私の場合は現在無職なので時間はたっぷりあるわけですが、大西さんは仕事をしながら書いているわけで、日々これだけの文章がよく書けるもんだと感心します。
私にとっては、“学び”がたくさんあるブログです。
大西さんが言及された「ひとこと」に関していえば、広告のキャッチコピーなんかまさにそうかもしれませんね。
以前、“おいしい生活”なんてなコピーがありましたが、簡単な何気ない単語の組合せなんだけど、すごくインパクトがありました。

仕事の現場で考えてみると、仕事ができる人というのは、自分のアイデアをものすごく練り込んでいます。
単純、簡単なことでも考えたうえで取り組んでいます。

私にはそういうのが足りなくて、よく諸先輩方から叱られたものです。
私が企画書や資料を作成して出すたびに、上司から「これはよく練り込んで作ったのか」、「読み手側に何も伝わらない文章じゃないか。お前は一体何が伝えたいんだ」などとお叱りの言葉を受けました。
自分のことを読書家でもあり文章力もあると思っていた私のプライドが脆くも崩されていく瞬間でした。
練り込むという作業は、「本当にこれでいいのか」、「何か欠けているところはないのか」、「考えた通りに実現できるか」といったことを繰り返し何度も考えることです。
これを経験した人ならわかると思いますが、この思考のサイクルでは、同じことを何度も考えるので、堂々巡りというか迷路にはまったような感覚になることもあり疲れを感じます。
上司から企画書を何回も突き返されると、嫌になってくることがありますよね。

マニュアル人間」という造語がありますが、これは、マニュアルに書かれていることしかできない、状況に応じた臨機応変な対応ができない人のことを表した言葉です。
マニュアルに慣れてしまうと、思考が硬直化し考えるクセがつきません。
たしかにマニュアルは必要です。
マニュアルを作る人がいて、いろんなマニュアルができたからこそ便利な世の中になっているのです。
しかし、マニュアルがないと何もできないという人間になってはいけません。
世の中がどんどん変化し、人々の価値観が変わっていく中では、マニュアルの中身もどんどん変えていく必要があります。
その時に、思考が硬直化したマニュアル人間では、変化についていけないのです。

かつて、AOLのサイトで仕事をテーマにしたコミュニティを立ち上げた時、仕事以外のほとんどの時間を、このコミュニティの構想を練り上げるために使いました。
AOLのサービスが日本で始まった直後だったので、どうやって人が集まるコンテンツにするか、どうやって運営をやっていこうかとない頭をひねったものです。
いつかは全国中の会員が一同に会するオフ会(全国オフ)を実現したいという目標を立て、そのためには全国各地でローカルなオフ会を頻繁に開催して宣伝をする必要がある考え、そのシナリオにそって全国中を飛び回りました。
実現してみると簡単なことのようにも見えたかもしれませんが、構想を練り上げ、地道な種蒔きをしたプロセスには、かなりの時間とエネルギーを要したのです。

自分で「練って何かをした」経験があると、練られていない物事を見抜く力がつきます。
上司の立場だと、部下が作成した企画書や資料などに目を通した瞬間に気づくことも多いのではないでしょうか。
見抜き方としては、例えば、部下に「なぜ、そう思ったのか?」とか、「本当にできると思う?」というふうに質問してみればいいと思います。
しっかり考え練ったものであれば、自分の言葉できちんと答えるはずです。
たんに物真似したものであれば、きっと回答もしどろもどろになるでしょう。
体裁ばかりつくろった企画書に騙されてはいけませんぞ(笑)。

練り込むということは、次の一手を考えるということでもあります。
「今こうしたいからこうするんだ」というレベルの話ではなくて、「今こうしたら、次はどうなるのか」ということまで考えるということです。

最近、些細な理由で殺人を犯してしまうという物騒な世情になっています。
後で知るその理由というのが、本当に短絡的なもので驚かざるをえません。
短絡的に人を殺してしまう人に欠落しているのが、この「次はどうなるのか」ということを考える思考だと思うのです。
仕事の現場は、練り込む力を身につけさせてくれるいい訓練の場です。
どうせ仕事をするんなら、「どうしてこうなるのだろう」、「ここでこういう行動をとったら次の展開はどうなるのだろう」、「相手を落とすにはどういう手が有効かな」などと思いを巡らしながらやりたいもんですね。




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