時間があるなら本を読め頭ごなしに否定するのはやめろ

2006年04月01日

ブランド・肩書きを捨て市場に出よう

07ab8d6c.jpg寺山修司の有名なセリフに、「書を捨て街に出よう」というのがありますが、私はこれを文字って「仕事人よ、ブランド・肩書きを捨て市場に出よう!」と言いたいと思います。
特に、現在どこかの組織に属していて、その組織が大きければ大きいほど、ブランドが有名であればあるほど、またそういった組織の中で高い肩書きがついていればいるほど、そのことを強調しておきたいのです。
なぜこんなことをいうかといいますと、確立されたブランドや肩書きはそのこと自体が強い力を持っているので、その人の真の実力以上に仕事をやりやすくしてくれる環境をつくってくれるからです。
もちろん、仕事がやりやすいというのは仕事人にとっては歓迎すべきことです。
しかし、自分の本当の力を見誤らせる状況が既にあると、自分の力を過信してしまうこともあり、そこが恐いというのか、本人にとっては不幸なのです。

私自身の体験談についてお話しましょう。
私は大学卒業後、東証一部上場のある大手電機メーカーに就職しました。
入社当時で創業以来の歴史が70年ある会社でした。
売上高1,500億円以上、資本金100億円以上、社員数は約4,000名という規模の会社でしたから、既に市場では知られた存在で取引関係の基盤もしっかり確立されていました。
今でこそ急成長したITベンチャー企業などが脚光を浴びていますが、現実のビジネス界では、長い歴史とその中で培われたブランド力や信用というのはまだまだ有効なのです。
“三菱”、“住友”、“三井”などといった有名ブランドは今でも世間では信用のブランドとして十分通用するでしょう。


まぁ、そんなことで私の仕事人生活は大企業の本社勤務から始まりました。
最初の配属は総務部でした。
企業の中で総務部は外部からものを買う部署なので、職場にはたくさんの取引先の担当者がよく出入りしていました。
そういった担当者の中には、小さい会社の社長もいて、当然ながらそういう人たちは、新入社員の私よりはずっと年上で社会人経験も豊富なわけです。
でも、ビジネスの世界では、“売る”側の人より“買う”側の人のほうが立場が強いので、私のようなペーペー社員に対しても取引先の担当者たちはペコペコしてくれたのです。
最初のうちはこちらも恐縮しながら相対していたのですが、慣れとそれに伴う感覚の麻痺というのは恐ろしいもので、だんだんそれが当たり前になってくるとこちらの態度も横柄になっていったような気がします。

下請けの仕事をしている小さい会社に勤めている人や営業の仕事をしている人なら実感できると思いますが、取引先の担当者から怒鳴りつけられたり、呼び付けられることってありますよね。
電話口に出たら、「とにかくすぐ来い!」と言われたりとか、「いい加減な仕事をしやがって!もうお前のところとは取引中止だ!」と脅されたりとかね。
私は今小さい会社にいるので、取引先からこんなことを言われる状況のほうが多いのですが、今の会社以前に勤めていた大企業では、そういうことを取引先の担当者に言っている同僚たちのそんな言葉をよく耳にしていました。
私は、社会人になって以来、勤務先が大企業であれ中小企業であれ、元請け・下請けの関係であれ、会社のブランド(看板)や肩書きで仕事をすることに違和感を感じていました。

最初に勤めた大企業を辞めた理由として、「このままこの会社にいたら社外で通用しない仕事人になってしまう」、「市場や社外よりも社内事情を優先する仕事のやり方は間違っている」という強い思いがありました。
最初の会社を辞めたのが30歳の時でしたが、それ以来、自分自身を鍛える意味で、だんだん規模の小さい会社に転職を続けてきました。
今では、隣の席に座っている社長が、「ヨロンくん、この1リットルのミネラルウォータを近所のディスカウントショップで買ったんだが値段が100円なんだ。どうだ安いだろう。本当にお得だよ!」といったようなことを嬉々として言うのを聞きながら、何だか嬉しい気分になる今日この頃です(笑)。

私の体験の中でもう一つ考え方に大きく影響を与えたのが、社外の異業種交流会への参加でした。
世の中には異業種交流を目的とした交流会がたくさんありますが、私が参加したのはインターネットを手段にして集う交流会でした。
インターネットさえ使えれば誰でも参加できる自由な交流会だったので、本当にいろんな業界、職業、地位、年齢の人が集まりました。
そして、その交流会がよかったのは、参加者は皆んな個人の資格で参加しているので、お互い利害関係抜きで交流できたことです。
そういった環境の中で、仕事人としての個人に問われたのは、その人自身が持っている仕事の能力や姿勢でした。
勤務先のブランドや勤務先での肩書きを意識した話し方をする人は、不思議なもんで周囲からそっぽを向かれ、そのうち居辛くなったのか自然に消えていくというのがふつうでした。

私が相手の実力を試す時によくやるのが、相手にその人自身の仕事について語らせることです。
例えば、相手が「私は経理の仕事をしています」と言えば、「ほー、そうですか。経理の仕事はいろいろありますが、具体的にはどういう仕事を担当されているのですか?」と質問し、「決算書の作成を主に担当しています」と相手が言えば、「そちら様の会社ではどういう流れで決算書ができていくんですか?」というような質問をするとか、そういうふうに掘り下げて質問していくのです。
単純な質問の繰り返しなのですが、担当している仕事をそこそこ極めていないと、意外に答えるのが難しいのです。
勤務先のブランドや肩書きだけで日々過ごしている人にとっては、相当難しい質問に感じられるかもしれません。
体を張り、経験を積み重ねながら仕事をしている仕事人の前では、ブランドや肩書きというのはまったく意味がない、通用しないものだと知るべきです。
だから言いたいのです、「ブランド・肩書きを捨て市場に出よう」と。

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この記事へのコメント

1. Posted by ひろ   2006年04月02日 00:45
人と付き合うときはなるたけ肩書きやブランドを隠します(笑)
まずは自分というブランドを理解してもらうところから入ります。
ヘンな奴ですね(^^;
2. Posted by ヨロン/竹内富雄   2006年04月02日 08:49
ひろさん、こんにちは。ヨロンです(^_^)。

>人と付き合うときはなるたけ肩書きやブランドを隠します(笑)
って、仕事上の付き合いもですか?
それとも私的な付き合いのとき?
3. Posted by ひろ   2006年04月02日 10:19
私的な場合はとくにそうですね。
仕事のときは、名刺を渡さざるを得ないのでなかなか(^^;
4. Posted by ヨロン/竹内富雄   2006年04月03日 21:59
ひろさん、こんにちは。ヨロンです(^_^)。

そうですね、私的な場では会社のブランドや肩書きはあまり意味がないですものね。
5. Posted by 高橋   2006年04月04日 08:22
「東証一部上場のある大手電機メーカーに就職」なんていう過去の栄光も捨てたほうが良いと思いますよ。

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