2005年09月10日

“業者”呼ばわり

取り引きする会社、特に商品やサービスを買い付ける会社のことを“業者”って呼びますよね。
「どこの業者を選ぶか」、「明日、業者を呼べ」、「この業者は使えねーな」などといった会話が職場で日常的に交わされているのではないでしょうか。
通常どこでも使われる言葉なのでふつうに受け止めている人は多いと思いますが、ただ、ニュアンス的には何となく取引先を見下したような感じがありませんか。
数年前の話ですが、当時同僚だった人からこんな話を聞いたことがあります。
その人は私と同じ会社に入社する前、ある小さな広告代理店で働いていました。
その人はその会社で働いていた頃、ある有名な鉄鋼会社へ仕事で出入りしていたそうです。
その鉄鋼会社にはたくさんの業者が出入りしていたようですが、その鉄鋼会社の担当者は、昨日今日入社したような若い人でも出入りの業者の人に対して「業者さん」という呼び方をしていたのだとか。

私の社会人感覚でいえば、ふつう、会社名かあるいは氏名がわかっていれば、例えば「○○さん(会社名か氏名)」という呼び方をするものです。
厳密にいえば、会社名を「さんづけ」するのも変ではありますが、まぁ、日本の商慣習ではこれは一般的でしょう。
これに比べると、どこの会社に対しても「業者さん」という呼び方をするのは失礼のような気がします。
もちろん、多くの業者を呼んで説明会などを開く際に全員に対し「業者さん」という言い方をするのはおかしくはないと思うし、上記の鉄鋼会社の社員の中にも、ちゃんと相手を会社名や氏名で呼ぶ人もいたと思います。
さきほどの私の同僚は、当時40代でしたが、取引先の鉄鋼会社に行く度に、若い女性社員から「業者さん」と呼ばれることに腹が立ったとしきりに言っていました。


よくよく考えてみれば、勤め人というのは、会社、組織の看板で仕事をしています。
そして、その看板は、会社や組織が有名で巨大であればあるほど強大な力を発揮します。
誰でもが知っているような優良企業であれば、周囲や取引先は一目置くでしょう。
「いやぁ、○○さんにはいつも大変お世話になっています」と相手がへりくだった言葉遣いをしてくれますし、こちらが少々失礼な言葉遣い、いや相当失礼な言葉遣いをしても我慢してくれるかもしれません。
相手は、へたに反発や反論などしてお客さんの怒りを買い取り引き自体を停止されることが恐いので自然にそういう態度になるのです。

自分が逆の立場を経験してみればわかることなのですが、いきなり大きな会社や組織に入り、そのままそこに居座っていると感覚が次第に鈍っていきます。
一般的に役人が民間企業で働く人のような動きができないのは、やはり役所(国、地方自治体という競争のない、倒産しない組織)という看板で働いているからでしょう。
私も仕事で多くの役所の窓口を訪ねたことがありますが、全員とはいわないまでも腹の立つ対応をされたことが何度もあります。
書類のほんのちょっとの不備で書類を乱暴に突き返された、とかね。
どんな企業や組織で働いていようが、「働く」とはどういうことか、「取り引きする」とはどういうことかということをしっかり理解できていれば、社会人として、仕事人として日常の仕事できちんとした対応ができるはずです。

私は以前建築設備の会社で働いていましたが、仕事をもらっている会社の担当者から失礼な言い方の電話を何度も受けたことがありますし、今の会社は30名程度の中小企業ですから取引先にはかなりへりくだった対応をします。
小さい会社の場合は世間的にはほとんど認知されていませんから、とにかく丁寧な対応を心掛け、相手の印象を良くし、相手に認めてもらう必要があるのです。
私は営業ではありませんが、たまにお客さんのところへ行くことがあります。
そうすると、大きな会社と比べ明らかに見下した対応をしているなということがわかります。
仕入先であっても、世間的に名の通った会社であれば相手も対等な対応をするのでしょうが、名も無い会社であれば「お前なんかただの業者だよ」、「お前の会社なんていつでも切れるよ」といったようなことを腹の中で言っているかもしれません。

ちょっと考えてみてください。
現在世間的に高い評価を受けている企業だって、創業期には誰からも評価されない中、創業者や創業メンバーの並々ならぬ苦労があって今日の地位を築いているのです。
創業期の精神や社風が残っていれば、その会社の社風で受け継がれていれば、業者を見下すような態度なんかとれないはずです。
私も自分の仕事のやり方、取引先との接し方においてまだまだ反省すべき点がたくさんありますが、「奢らない」、「会社の看板に甘えた仕事のやり方をしない」ということだけは常に心に留めておきたいと思っています。

yoron at 10:08│Comments(14)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 仕事人の叫び 

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この記事へのコメント

1. Posted by グッチ   2005年09月12日 00:36
ヨロンさん、ご無沙汰しております。

依然として、筆鋒鋭いブログでご健在のご様子で、頼もしく拝見しました。

会社を転職なさったんですね。

ところで、この度ブログを再開いたしました。

前回とはやや趣向の違うブログですが、再びお付き合いをお願いできればと思います。

今後もよろしくお願いいたします。

http://blog.livedoor.jp/khappyk/
2. Posted by masa   2005年09月12日 22:44
よろんさん、ご無沙汰しております。またこのたびお誘いをいただきまして有難うございました。フリーランスの研究者である私にとっては、このご意見とても嬉しく思っております。今後ともよろしくお願いいたします。
3. Posted by 大è\¿ã€€å®   2005年09月13日 15:56
基本中の基本ですね。「業者」なんて社員に言わせている会社は二流三流というか、どうせ公共事業で生きている会社ぐらいでしょう。顧客志向ゼロですね。
お取引さま、丸々会社さまなどいくらでも言い方はあります。もし、会社でそういう言葉が使われていたら、まず社の恥だと思うことでしょうね。
4. Posted by ヨロン/竹内富雄   2005年09月13日 22:43
グッチさん、こんにちは。ヨロンです(^_^)。

おお、ついに再開ですね!
いよっ、真打登場!って感じですね(笑)。
今後どんな展開をされるか今から楽しみにしております。

5. Posted by ヨロン/竹内富雄   2005年09月13日 22:44
masaさん、こんにちは。ヨロンです(^_^)。

そうおっしゃっていただけると嬉しいです。
こちらこそよろしくお願いいたします。
6. Posted by ヨロン/竹内富雄   2005年09月13日 22:47
大西さん、こんにちは。ヨロンです(^_^)。

おっしゃる通りですね。
役所あたりだったら、「おい、そこの業者」ぐらい言いかねませんね(笑)。
相手の呼び方一つで、会社の格、姿勢がわかると思います。
7. Posted by masa   2005年09月14日 23:31
今、六本木ヒルズでうちの学校が裏方をやっているイベントを開催中なのですが、学生までもが「業者さん」と言っていたので、きつく注意をしてしまいました。情けないことです。
8. Posted by ヨロン/竹内富雄   2005年09月16日 23:29
masaさん、こんにちは。ヨロンです(^_^)。

あら、そうなのですか。
じゃ、タイムリーな話題だったんですね。
「業者さん」と呼んだ学生は、きっとmasaさんの一言で社会人の何たるかを知るきっかけができたのではないでしょうか。
9. Posted by mm   2014年11月10日 22:48
読ませていただいているのは2014年で
このブログを書かれてから10年近く経っているのですが
とても勉強になりました。

「業者」という言葉を使ってはいけないという
注意を受けたことを思い出し、ネットで検索していたのです。

言葉そのものはそう悪いものではなさそうですが、用い方でその人の品性がわかるというもののような気がしました。

ありがとうございました。
10. Posted by ヨロン/竹内富雄   2014年11月13日 15:21
>mmさん

コメントありがとうございます。
おっしゃる通りですね。
業者という言葉自体は一般的なので使うのは問題ないと思いますが、使う際にどういう思いでどういう使い方をしているかが問題ですね。
11. Posted by mm   2014年11月19日 01:01
ずいぶん前に書かれたものなのに、私のコメントに反応してくださってありがとうございます。

その後も少し考えたのですが、私は注意を受けた経験から、この言葉を使えないし、使わない、という感じです。
私がどんな意味で使ったとしても、「業者」と呼ばれた人がどう感じるか、それ次第かなあ、と思います。

この言葉を悪意なく用いられていた方に、これを伝えたところ、そのやり取りのなかで、「言葉狩り」という表現が出てきて、胸に刺さりました。もちろん、そんなつもりはなかったのですが、コミュニケーションのむずかしさを痛感。

さて、私自身が、この言葉を使って注意を受けたときのことを少し思い出しました。注意を受けたことに驚いたのですが(とても昔のことです)、注意をしてくださった方は、文脈に関係なく、「使わないほうがよい」と教えてくださいました。注意をしてくださったことに改めて感謝しています。

再考の機会を与えてくださったこのブログにも感謝です。
ありがとうございました。
12. Posted by ヨロン/竹内富雄   2014年11月19日 22:47
>mmさん、

こちらこそ、ご丁寧なコメントを頂きありがとうございます。

会社名もあり、自分の名前もあるのに、呼ばれる際に業者呼ばわりされると心情的には誰でもいい気はしないでしょうね。
人は自分の名前を呼んでもらえると相手に認めてもらえているようで嬉しく感じるものですが、業者呼ばわりするのは、その逆で相手に認められていないような感じを持っちゃうのではないでしょうか。
13. Posted by mm   2014年11月25日 16:25
この件でしつこく失礼します。

高倉健さんは映画の関係者のみなさんのことを、
たとえば、照明ご担当の方を
「そこの照明さん」のような呼び方をしなかったそうです。これに通じるものがあると思います。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141125-00000008-pseven-ent

私もいろいろ考えてしまったのですが
自信をもってこれからも「あまり使わないほうがいい
言葉だと思います」と言い続けていこうと思います。
ありがとうございました!
14. Posted by ヨロン/竹内富雄   2014年12月01日 23:21
>mmさん

とても素晴らしい心掛けだと思います!
本当に人格的に立派な人は、あげていただいた高倉健さんのような方かもしれませんね。

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