成功体験を持て温室育ちのひ弱な仕事人

2005年07月26日

『商売』の基本を忘れちゃいないか

商売』の基本について語るとき、それは語る人によっていろんな言い方があるでしょう。
私なりの言い方をすると、「商売とは、商品やサービスをお客様に売り、その商品やサービスを準備するのにかかった費用を支払い、売上代金から費用を差し引いた利益を増やしていくこと」かなと。
もっと簡単に表現すると、
商売とは、利益{=売上−費用}を増やすこと
というふうに考えています。
そうすると、当然のことながら、利益を増やすには、“売上を増やす、費用を少なくする”というアクションが必要になってきます。
これが商売の基本であるなら、民間企業で商売に携わっている人たちは、このシンプルな行動原則に従って仕事を行うべきなのです。

ところが、大きな会社の勤め人となり、組織の中の一歯車となって細かな担当業務のみを受け持つようになると、なぜかこの原則を忘れてしまいがちです。
日々資金繰りに追われている中小企業の経営者や個人事業主からみたら、「おいおい、商売人なんだから商売魂を持てよな」という現象がみられるようになります。
例えば、来客があっても平気で長時間待たせたり、電話が鳴っても自分の部署じゃないからととらなかったり、電話に出てもタライ回しにしたり、そのくせ、会議資料を作るのはうまかったり、プレゼンテーションスキルが高かったり、みょうに頭だけはよかったりなんかしてね。
自分の中で「商売とは何か」、「自分の会社はどうやって利益を稼いでいるか」、「自分の給料は誰からもらっているか」ということが明確になっていないと、いわゆる大企業病というのにすぐかかってしまいます。


商売人でありながら商売人魂を忘れた恥ずかしい体験談が私には多々あります。
その一つを紹介しましょう。
かつて、ある会社の地方支店に勤務していたとき、その支店全体の管理責任者をつとめていました。
支店の管理責任者というのは、支店長と一緒になって支店経営にあたる職務です。
ですから、支店を一企業にみたてたら、経営者の一人として会社を倒産させないように適切な判断を行い、スピーディに行動し、全体を盛り立てていかなければならない立場だったわけです。

ある時、寝耳に水状態でしたが、取引先が会社更生法の適用を裁判所に申請して受理されその通知をしてきました。
当時その取引先には未回収債権が40万円ありました。
支店には取引先の弁護士から電話とFAXにて連絡があったのですが、私は事務的に受け、40万円ぐらいだったら大した金額ではないので本社の関連部門に一報を入れ、未回収不良債権として処理しようと考えていました。
そして、支店長にその旨報告したところ、支店長が烈火のごとく怒りました。
「バカモン!たかが40万円というが、お前はそれが自分の金でも同じように思うか!」

そう言うやいなや、支店長は私と営業部門の責任者を同伴して、事前連絡も入れずに取引先に乗り込みました。
アポなしではあったものの、支店長以下肩書きの付いた人たちがぞろぞろやって来たせいか、先方も各責任者が出席して対応してくれました。
こちらからはひたすら未払い分を何とか支払ってくれるようお願いするしかありませんでした。
結果的にはその場で支払いについての確約をもらうことはできず、その後もこの未回収債権を回収することはできませんでした。
ひょっとしたら、支店長は既に腹の内では「回収は無理だろうなぁ」と思っていたのかもしれません。
しかし、危機感を持たない部下に対し、「それは商売人の姿勢ではない!いいか、商売とはこういうもんだ!」ということをわからせたかったのではないでしょうか。

知識レベルでは、財務諸表の見方ぐらいわかりますし、危機管理が重要なこともわかっています。
ただ、これはたんに知っているというだけで、過去に自ら実践したということはありませんでした。
取引先の倒産情報を入手したら相手先に乗り込んで債権をいち早く押さえる、なんてなのは書籍などでは読んだことはあっても、まさか本当に目の前でそれが起き、自分の職務上対応しなければならないなどということは露ほども思っていませんでした。
頭の中で考えているだけで行動しなければ何の意味も無い」ということを痛切に考えさせられた出来事でした。

この他にも私の失敗は数々ありますが、私の弱点はすっかり身についてしまった大企業病的体質かなと思っています。
理屈は知っているし、知識もあるし、マニュアルも作れる、、でもここぞというとき、本当に重要な局面では動けないし、適切な判断もできない、我ながら情けなくなります。
本来なら、社会人のスタート時にしっかり商売人の基本を身につけ、それに基づいた行動ができるような習慣が身についていれば今頃一人前の商売人として仕事をしていたかもしれません。
そんなことをつらつらと考えている今日この頃です。


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