業界のしきたり・会社の習慣社長が社長でなくなる瞬間

2005年01月07日

あるべき論 vs 現場論

仕事をしていると、必ずといっていいほど、「あるべき論」と「現場論」がぶつかります。
自分自身の中でぶつかり合うこともあれば、それぞれの意見を持った人同士がぶつかることもあります。
どこまでを現場というか、現場の定義も難しいのではありますが、次のようなケースで考えてみましょう。

あなたの会社は急成長中の会社で、直接顧客対応をする現場では猫の手も借りたいほど超多忙の状態が続いています。
そんな状況なもんだから、時には社内の手続きルールが無視されたり、時には違法行為もあったりします。
そういったルール無視や違法行為の結果、不都合なことも発生したため、現場を管理するあなたは、本社の管理部門のスタッフに助けというか、尻拭いをお願いしました。


これに対し、本社のスタッフはあなたにこう告げました。
「何を言ってるんですか。企業は法を守り、ルールを守ってこそ社会的に存在する意義があり、そうであってこそ繁栄するんだ。そもそも、それを守らせるのがあなたの役割じゃないのか。あなたが起こした不始末の尻拭いなんかする気はないね」と。
あなたは、そのスタッフに言われたことは理解できても、原理原則にこだわる姿勢に釈然としないものを感じました。

結局、「法や会社のルールを守れ」の一点張りで妥協しないスタッフに見切りをつけ、あなたは現場に戻ってきました。
部下に経緯を話したところ、部下は憤慨しながらこう言いました。
「何言ってんだ、そいつ。現場の苦労や現状を知らないで、理想論ばかり言いやがって。そんなこと言うんだったら、そいつに現場の仕事をやらせたいもんだ。ほんと、本社の管理部門のやつらは、現場を知らんやつばっかだな」と。

こういうやりとりというのは、案外多くの仕事の現場であるのではないでしょうか。
私は、本社管理部門での勤務が長いため、どちらかといえばあるべき論を言う傾向があります。
ただ、地方事業所の勤務経験もあるため、現場感覚もそれなりにあります。
現場と管理部門の両方を経験すれば、ある程度バランス感覚が養われるのですが、どちらか一方しかないと、どうしてももう一方に対してはイメージでしか考えることができません。
現場と管理部門の間に溝ができるとしたら、このあたりに原因があるのかもしれません。

理想を述べさせていただければ、「あるべき論」をしっかり持ちつつ、一方で現実を見すえたうえで判断を下し、自社にとってベストな方法を選択できることでしょう。
そのためには、社員の1人ひとりがまずは相手を受け入れ、議論をし合えるような社風が必要です。
どちらか一方だけがまかり通るような社風ではダメです。

かつて、現場を十分経験しつつも、しっかりと自分なりの「あるべき論」を持った上司のもとで仕事をしたことがあります。
その上司の言葉には、いつも説得力がありました。
私が何かで困っていると、「ヨロンくん、それじゃ現場は動いてくれないよ。こういうふうにしたほうがいいんじゃないかな」とアドバイスしてくれたり、またある時は、「現場の人間にはそこまで考えているやつはいないから、管理部門が考える必要があるんだ」と諭してくれたものです。

現場の実態や事情を理解しつつも、会社の発展のための戦略や戦術を考えていくのはマネジメントの仕事をする人の役割です。
「現場はだらしない」、「本社の管理部門はわからず屋だらけだ」と一方を責めるばかりじゃ、何の進展もないし、そういう姿勢は会社には百害あって一利なしです。
仕事人としては、“あるべき論 vs 現場論”ではなく、“あるべき論 + 現場論”の思考を持つべきなのかもしれませんね。



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この記事へのコメント

1. Posted by mishimax/三島和彦   2005年01月08日 09:45
>“あるべき論 + 現場論”

 "+"で繋ぐの賛成です。
 "VS"と考えると本当に対立が深まったりしますので。
2. Posted by ともこ   2005年01月08日 14:33
困り果てて助けを求めて来た人を門前払いする人・・・?(・ω・;;
『取引先をズバズバ切る技術さん』+『相手が怒ったら謝る営業さん』
というチーム(?)を組んで仕事をしてる先輩達を過去沢山見てきました。
ニッチもサッチも行かなくなったら、第三者が登場した方が
スンナリ行くと私も思ってきたのですが・・・これは甘えなのかな?
自分の失敗を自分で解決してゆくのが大人なのかな?
(実は私も、我が家でよく突き放されていますw)
3. Posted by ヨロン/竹内富雄   2005年01月10日 10:25
mishimaxさん、こんにちは。ヨロンです(^_^)。

コメントをいただきありがとうございます。
そうですね、無理に対立することもないでしょうから、「+」の考え方で仕事をするのがいいかもしれませんね。
4. Posted by ヨロン/竹内富雄   2005年01月10日 10:30
ともこさん、こんにちは。ヨロンです(^_^)。

そうですね、他人に助けを求めたくなるケースというのはあるのでしょうが、やっぱり基本は“自分の問題は自分で解決”することですかね。
ほら、ことわざにも『天は自ら助く者を助く』ってあるじゃないですか(笑)。
大人の人間関係は、「自立」した人間というのがベースにあるからでしょうか。

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