あなたのスタンスはどっち?「この業界は・・・」が思考を麻痺させる

2004年12月30日

仕事人は誰でもプライドがある

仕事人なら、誰しも大なり小なりプライドを持っているのではないでしょうか。
自分が担当している仕事については、自分なりに工夫していい仕事をし、多少なりとも会社に貢献していると思っているはずです。
会社はある面ドライなので、本人のプライドなんかに関係なく貢献度を評価しているものですが、本人のプライドと会社の評価の乖離があり過ぎれば、本人はプライドを打ち砕かれてしまうということになります。

会社の評価もそうですが、他人から自分の仕事が評価されないとプライドが傷つくことってありますよね。
自分のやっている仕事を知らない人から、「何でそんなくだらない仕事をやっているんだ」とか、「お前の仕事のやり方は効率が悪いな」などと言われようもんなら、誰だってムッとし反発心を抱きます。
人によっては、「お前に言われる筋合いはない!」と激怒する人だっているかもしれません。


私は現在の会社で3社目になりますが、転職するたびに、前職との比較でその会社あるいはその会社で働く人たちの仕事のやり方に対し、非効率な部分を感じることがあります。
私ばかりでなく、転職を経験した人なら、「この会社はここがおかしい」と思うことはあるのではないでしょうか。
転職を経験していなくても、社外の情報などから、自分の会社はここが他社に比べ非効率だと感じることはあると思います。

現在の会社に対しても、入社してまだ1ヶ月しか経っていないのですが、非効率な面や仕事のやり方で?と思う面が多々あります。
社外から来た私がそう思うのは当然で、むしろ、会社側もそういう意識を持ったまま社内のいろんな改革・改善に取り組んでほしいと考えているのかもしれません。
そういうことを考えれば、入社後しばらくは様子を見ながら、いろんなものを観察し、どこからどう着手すればよいか構想を練る時期のような気がします。

転職者が失敗する要因の一つに、いきなり前職時代のやり方を適用して、周囲にそれを押し付けようとすることがあります。
前勤務先が優良企業であればあるほど、効率的な業務プロセスを経験していればいるほど、転職先の仕事のやり方が遅れて見えるのは自然のことです。
そういう現実を目の前にしたら、気がはやる人は、一日も早く効率化しようと考え行動を起こしたくなるのかもしれません。
だって、その人にとっては、効率化することによって会社の業績が向上するのは自明の理なわけですから。

しかし、冒頭でも書いたように、どんな仕事人にもプライドがあることを考えれば、「効率のいいやり方なら、誰でも共鳴する」という考え方を前提にして仕事をするのは極めて危険です。
誰だって、面と向かって自分の仕事のやり方を批判されたり、これまで自分が積み上げてきたものをないがしろにされると、反発心を抱き抵抗したくなるものです。
場合によっちゃ、自分に害を及ぼす相手の足を引っ張ってやろうという企みを持つかもしれません。
こうなってしまっては、せっかくのいいアイデアややり方も活かされません。

私は、これまでの仕事人人生の中で、自分の仕事のやり方を否定されたために、表立って抵抗や反発はしないものの、陰でサボタージュしたり、非協力的な態度をとっていた人たちをたくさん見てきました。
また、転職して間もない時期に自分の力を認めさせようとはり切り過ぎたために失敗した人も見てきました。
活発な議論で物事を決める社風がない会社で、前職のスタイルで活発な議論を喚起しようとして失敗した人も知っています。
すべての転職に当てはまるわけではないのでしょうが、期間の問題はあれ、転職者は転職直後は、ぼちぼち仕事をしながら社内の様子を伺うという慎重さが必要なように思います。

私の経験でもそうですが、最初はおかしいと感じていたことでも、だんだんその会社の社風に染まっていってしまうということがあります。
最初は抵抗を続け自分を通していたが、その会社に居続ける間に、その会社に合ったやり方に変えている場合もあります、本人は不本意ではあっても。
つまり、会社に何年もいるということは、それぞれに歴史があるということなのです。
紆余曲折ありながら、1人ひとりが自分なりの仕事のやり方を身につけたということです。

人は、事情も知らず、それまでの経緯や歴史を知らない人から一方的に言われると受け入れることができません。
受け入れられるのは、相手が聴く耳を持ち、事情、経緯や歴史にも関心を持って自分から近づいていこうという姿勢をとる時だけです。
大人のコミュニケーションを経験したことのある人ならわかるでしょうが、相手に理解を示してこそ相手も自分に対し心を開くのです。
仕事の現場でいい仕事をしようと思ったら、「誰でも自分の仕事にプライドを持っている」ということを常に念頭に置きながら、相手のプライドを傷つけないように配慮することが大事なんではないかと思うわけです。
松下電器の創業者・松下幸之助氏は、部下に雷を落とした時はその後で必ず相手のフォローをしたといわれますが、まさに松下氏は配慮の神様だったのかもしれませんね。










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この記事へのコメント

1. Posted by 電気猫   2004年12月30日 16:01
ヨロンさんこんにちは。
私も転職を何度かしてますのでヨロンさんのおっしゃることはよくわかります。
ヨロンさんは今回、転職して入ってきた人の立場で主に書かれたようですが、会社全体や経営側の視点で見た場合どうでしょうか。
> その人にとっては、効率化することによって会社の業績が向上するのは自明の理なわけですから
と書かれていますが、そんな貴重な案を捨てておく手があるでしょうか。高い金を払ってコンサルを依頼するより余程効果的じゃないですか。
私は、転職者が慎重に行動しようとするのは会社にとってはマイナスで、転職者から積極的にアイデアを引き出そうと会社が取り組むことがプラスになると考えます。
2. Posted by ヨロン/竹内富雄   2004年12月31日 00:11
電気猫さん、こんにちは。ヨロンです(^_^)。

ご意見をいただきありがとうございます。
はい、おっしゃる通り、会社全体、経営側から見れば、転職者には一日も早く力を発揮して、持っているノウハウやスキルを社内展開してほしいと望んでいると思います。
今の会社でも、上司からそのように言われています。
ただ、それは会社側から見た場合であって、「企業は人なり」ともいわれますが、社内の人間関係を軽視してはなかなか物事が進められません。

記事中でも書きましたが、(優秀であったはずの?)転職者たちが周囲とうまく協調できず力を発揮できなかったり、再び去ってしまう光景を過去何度も見てきました。
少し保身を考えた言い方になってしまいますが、事情がわからないうちは社内観察をしつつ、次第に事情が理解できていく中で自分の持ち味を発揮するのがベターなんじゃないかと思うのです。
おっしゃるように、会社側が転職者を受け入れる、活用しようする姿勢が前向きであればあるほど、転職者が力を発揮しやすくなるのは言うまでもありません。


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